第7章 この目も耳も節穴の夫なんて、もういらない

指先についた血は、目が痛くなるほど鮮烈な赤だった。ねっとりとした感触に、中野航平の呼吸が数拍、乱れる。

その変化に、傍らの中野蓮も気づいた。

六歳の彼は、もう「死」というものを知っている。小さな顔を青ざめさせ、航平を見上げて問う。

「ママ……あの人、死なないよね?」

「黙れ!」

「死」という言葉を聞いた瞬間、中野航平の顔つきが底冷えするほど陰った。反射的に怒鳴りつけ、深い瞳には森のような冷たさが宿っている。

中野蓮はびくりと肩を震わせ、二歩下がって中尾美希にぴたりと張りついた。

「美希おばさん……」

父に怒鳴られたのは、これが初めてだった。

中尾美希は唇を動かし、蓮にそんな...

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